交通事故の加害者が、検察に起訴されずに不起訴処分(起訴猶予)になることは良くあります。
特に、被害者との示談が成立していると、事故への対応がされた=反省しているとみなされて、不起訴処分に影響を与えるとされています。
その一方で、被害者が処罰を望んでいるのに不起訴になる場合も少なくありません。
加害者が事故後に誠実な対応をしておらず、反省が感じられなくても不起訴になってしまうことは、損害を受けた被害者感情を逆なでします。
被害者にとっては我慢ならないでしょうが、公訴権(刑事事件を起訴する権利)は検察官の独占なので、刑事責任は被害者からではどうにもならないのです。
民事の損害賠償請求は被害者から提訴できても、公訴は被害者に許されていません。
起訴されて無罪判決が出されると、一事不再理といって、同じ事件で裁判できなくなります。
しかし、不起訴処分は裁判がされていないので、一事不再理の原則が適用されず、不起訴が覆って起訴すること(再起と言います)が理論上は可能です。
では、被害者が起訴して欲しいときは、どのように対処するのでしょうか。
不起訴に不服があるときは、検察審査会に審査の申立てをする方法が残されています。
不起訴を審査するのが検察審査会
検察審査会は、検察官の不起訴が妥当であるか、国民から選ばれた検察審査員が判断する組織で、地方裁判所に設置されています。
検察審査員が国民から選ばれるので、一般市民の視点で不起訴について判断され、不起訴が妥当でなければ再起の道が開かれることを意味します。
つまり、検察審査会制度は、検察官の独占的な公訴権に民意を反映させて、より適正な刑事事件の処理がなされるようにする目的で存在します。
過去にも、不起訴事件が検察審査会によって審査され、起訴に転じた例は数多くありました。
検察審査会は、申立てがなくても独自に不起訴事件を審査することは可能ですが、交通事故では不起訴がマスコミ等に注目されない限り、被害者やその遺族から申し立てられます。
検察審査会での審査結果
検察審査会では、11人の検察審査員によって不起訴処分の妥当性を審査するため、事件記録を検察庁から取り寄せたり、証人から話を聞いたりします。
そして、審査の結果に応じて、次のような3つのいずれかで議決されます。
・起訴相当
・不起訴不当
・不起訴相当
検察審査会でも不起訴相当とされた場合は、一般参加の第三者機関で判断されているだけに、残念ながら諦めるしかないでしょう。
しかし、不起訴相当と起訴相当については、不起訴をした検察官が再検討することになります。
再検討の結果、再不起訴にされることは多く、不起訴相当からの不起訴では、検察審査会が再審査しない限り覆りませんが、起訴相当を不起訴にした場合は違った展開になります。
検察審査会は、起訴相当とした事件を検察官が再不起訴としたときに再審査を行いますが、その結果、起訴相当の議決が再びされた場合は、強制的に起訴されます。
起訴するのは、不起訴にした検察官ではなく、裁判所が指定する弁護士です。
ただし、強制起訴になったからといって、有罪判決がされるとは限りません。
それでも、不起訴のままでは有罪になる可能性がゼロですから、検察審査会への審査申立ては、被害者にとって意味があるでしょう。