過失相殺とは損害賠償額を決定する際に被害者の過失も考慮して、その過失割合に応じて損害賠償額を減額することです。

・信号機のある交差点で赤信号で進入した車による事故
・信号機のない横断歩道上での歩行者に対する事故
・センターラインオーバーの対向車による事故
・通常走行中や停止中の車が後続車から追突された事故

以上のような事故は、被害者に過失のない事故となりますが、それ以外のほとんどの場合は被害者にも何らかの過失があります。

過失割合は法律で決まっているわけではなく、あくまでも当事者同士の話し合いで決めるものです。

話し合いで解決できない場合は裁判によって決めることになります。

過失割合の検討には、通称「別冊判例タイムズ」という本の基準が広く利用されており、保険会社でもこの基準を使用しています。

例えば、信号機のない交差点での車同士の事故の場合

原則A(左方車)が優先(道路幅はほぼ同じ)

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この場合の基本割合は、次のように3つに区分されます。

速度等 AB同程度の速度 A減速せず B減速 A減速 B減速せず
基本 A 40:B 60 A 60:B 40 A 20:B 80 

この基本割合をもとに、個々の事情に合わせて過失割合を調整していきます。

調整には修正要素というものが使われます。

修正要素
Bが大型車 Bに+5 Aが大型車 Aに+5
Bの著しい過失 Bに+10 Aの著しい過失 Aに+10
Bの重過失 Bに+20 Aの重過失 Aに+20
見通しのきく交差点

Bに+10
夜間 Bに+5

大型車は事故による相手方車両の被害が大きいため、注意義務が高いとして過失が加算される。

著しい過失には脇見運転や携帯電話の使用など、重過失には居眠り運転や酒酔い運転などがあり共に過失が加算される。

交通事故のほとんどは見通しのきかない交差点で発生するため、見通しのきく交差点での事故は非優先車(上記の場合はB車)に過失が加算される。

夜間は車のライトによって、他車を発見しやすいため、非優先車に過失が加算される。

注意:Bに加算するとその分がAから減算されることになり、Aに加算するとその分がBから減算されることになる。

上記の例で夜間に普通車Aと大型車Bが同程度の速度で交差点に進入し、衝突した場合

原則A(左方車)が優先のため、基本割合はAの過失40:Bの過失60となります。

そして、夜間の事故であることとBが大型車であることで修正するとBに過失10を加算することになり、結果Aの過失30:Bの過失70となる。

被害者が幼児の場合

誰に対しても過失相殺が適用されるわけではありません。

過失相殺において被害者の過失を問題とするには、被害者に物事の善し悪しを判断できる能力(事理弁識能力)が必要であり、一般的に7歳ぐらいまでは過失相殺されません。

ただし、子供自身に過失相殺が適用されないとしても、幼児を交通量の激しい道路に放置した場合などは両親や子供を監督する立場にある者の監督上に過失があるとして過失相殺されることがあります。