即決和解(裁判所では即決和解を「訴え提起前の和解」といいます)は、訴訟手続きによらずに、当事者の合意によって裁判所で和解する方法です。

最初から和解が目的なので、当事者間で示談が成立する見込みでなければ使えません。

即決和解を利用するには、簡易裁判所に訴え提起前の和解を申し立てます。

申立てをすれば全て利用できるとは限らず、若干でも紛争性を伴わないと、裁判所が紛争を解決する機関である以上、完全に解決した事件は取り扱えません。

したがって、示談書が作成され争いがない状況では、即決和解の申立てが却下されるかもしれず、示談が概ねまとまった段階で、即決和解を検討する方が確実です。

即決和解をしておけば、和解調書という裁判所作成の文書が得られるため、当事者が示談書を作成する必要もなくなります。

即決和解と示談の違い

当事者が裁判所手続きを利用せずにした示談(和解)と、裁判所手続きでした即決和解では、その効果が明確に異なります。

示談では、示談書を強制執行認諾約款付きの公正証書にしない限り、加害者が損害賠償金を支払わないときは、強制執行のために裁判が必要です。

しかし、和解調書が作成されると、それだけで強制執行が可能になり裁判を必要としません。

この違いは、特に被害者にとって大きく、請求しても支払いをしない加害者から、差し押さえなどで強制的に損害賠償金を回収できる手段になります。

即決和解のメリットデメリット

示談書を作成して強制執行認諾約款付きの公正証書にする場合と、即決和解で和解調書を得る場合では、費用と期間にメリットとデメリットがあります。

公正証書作成の手数料は支払い金額で決まり、100万円以下なら5,000円で済みますが、1,000万円を超え3,000万円までは23,000円、3,000万円から5,000万円までは29,000円と、金額が多くなればそれだけ手数料が増えます。

しかし、即決和解は金額に関係なく、一律で2,000円と非常に安価で、相手方の人数に応じた郵便切手代を含めても、公正証書よりもはるかに安く済みます。

その一方で、公正証書は示談書の内容に不備がなければ、大抵は2週間もあればできますが、即決和解の申立てから、和解調書が作成される和解期日までは、平均でも1ヶ月はかかります。

支払予定日が近い将来のときは、公正証書の方が早く作成できます。

即決和解の流れ

即決和解の申立ては、加害者の住所地(居住地)を管轄する簡易裁判所に行います。

加害者と合意があれば、他の簡易裁判所でも申立てが可能で、即決和解を利用する状況では、示談が事実上成立しているので、簡易裁判所の場所で争うことはないでしょう。

即決和解の申立書には、和解条項(加害者との合意内容)の添付が必須です。

和解条項が、裁判所に相当と認められなければ、修正されたり追加書類を求められたりします。

和解条項の審査や修正が完了すると、加害者と被害者に期日呼出状と、和解条項が送付されます。

期日は希望を伝えることもできるので、加害者も出頭できる日にしましょう。

簡易裁判所に出頭し、和解条項に合意していることを認めると、和解調書が作成されます。

この和解調書は審査済みの和解条項と同じですが、この時点で裁判所のお墨付きをもらうことが即決和解の目的とも言えます。